テレホンセックスをプレイしている時間を充実させるために
テレホンセックスというものは、「テレホンセックスをプレイしている時間」のなかにしかありません。
テレホンセックスは、テレホンセックスが開始されると同時に立ち上がり、テレホンセックスが終了すると同時に消えていくものなのです。
テレホンセックスについての記述が極めて困難なのは、テレホンセックスというものが基本的にはこの「プレイしている時間のなかにしかない」からに他なりません。
言わずもがなの話ではありますが、「テレホンセックス」と「テレホンセックスについてのテキスト」は全くの別物です。
「テレホンセックスについてのテキスト」をいくら読んだところで、テレホンセックスを実際に体験したことにはなりません。テレホンセックスを体験するためには「テレホンセックスをプレイする時間」のなかに身を投げ込まなければならないでしょう。
これは「テレホンセックスの録音」であっても同様です。テレホンセックスの録音を再生し、それをいくら聴いたところで、その「リスナーとしての体験」は、絶対に「テレホンセックスの体験」にはなりえません。
では、「テレホンセックスについてのテキスト」であるとか「テレホンセックスの録音」というのは、完全に無意味であるのでしょうか。これに関しては、半分はイエス、半分はノーということができるでしょう。
「テレホンセックスについてのテキスト」を読むことや、「テレホンセックスの録音」を再生することは、それを「テレホンセックスという体験」にしようとしているのであれば、無意味です。
ですが、「テレホンセックスについてのテキスト」を読み、「テレホンセックスの録音」を再生する、ということを、「実際のテレホンセックスをプレイするにあたっての参考として、思考の助けにする」というのであれば、ある程度は意味のあるということができるでしょう。
この場合、「テレホンセックスについてのテキスト」は、テレホンセックスという体験そのものを光り輝かせ、それを読み終えたあとにテレホンセックスというもののプレイ方法や意味などがまるごと変わってしまうような批評的なテキストを読むか、自分自身で書いていく必要があるでしょう。
「テレホンセックスの録音」に関しては、自分自身のテレホンセックスの反省の素材、あるいは、他人の録音のなかで発された言葉を次回のテレホンセックスで引用できるように参考するというような使用法によって、活用されることになるでしょう。
「テレホンセックス」というプレイは、「その場限りの発話」によって直線的な時間とともに進行していくもので、「さかのぼる」ということができません。
「テレホンセックス」の特徴として忘れてはならないのは、「話し言葉」であることによって「書き直しができない」ということです。テレホンセックスにおいては、プレイ中の失言や失敗などは、失言や失敗として空中に解き放たれ、それを修正することができないのです。
「テレホンセックスについてのテキストを読む/書く」、あるいは「テレホンセックスの録音を聞く/反省する/引用元として参照する」といった行為は、「次回のプレイ」に影響させるために行うのであって、「過去のプレイ」を書き直してよりよくする行為ではありません。
「テレホンセックス」において、「過去のプレイを書き直してよりよくするということが可能であるかどうか」を考えると、それは「未来のプレイのなかで行う限りにおいては可能である」ということが、ひとまずできるのではないかと思います。
「過去のテレホンセックス」は「現在のテレホンセックス」へと繋がっています。「現在のテレホンセックス」でのミスなり不満足は、すでに「過去のテレホンセックス」になってしまったテレホンセックスについて思考し、改善策を見出し「未来のテレホセックス」のなかで解消していく必要があるでしょう。
しかし「未来のテレホンセックス」というのは、「過去のテレホンセックス」とは、相手となる女性や会話の流れ、自分自身のコンディションなどがすべてまったく違います。
ですから、「過去のテレホンセックスと完全に同じテレホンセックス」を創出したうえで「そのテレホンセックスを書き換えていく」ということはできないと考えたほうがいいでしょう。
「過去のテレホンセックス」とまったく同じところがない「未来のテレホンセックス」は、それがまったく同じではないということによって、「過去のテレホンセックス」からの影響を受け、また、影響を与えもします。
「現在のテレホンセックス」、つまり、それだけがテレホンセックスである「テレホンセックスをプレイしている時間」というのは、過去のテレホンセックスをすべて引き受けたうえで、未来のテレホンセックスへと繋がっているテレホンセックスであるということができるでしょう。
この意味において、「テレホンセックスをプレイしている時間」を充実させるためであるならば、「テレホンセックスについてのテキスト」や「テレホンセックスの録音」を利用し、テレホンセックスについての思考を深めたり先鋭化させていくことは、決して無駄な営みではないはずです。
コメントを投稿