テレホンセックスの楽しみはその不自由さにこそある

「テレホンセックスをプレイしてみようか？」と考えたとしても、テレホンセックスをどうやってプレイしたらいいかわからないという人は多いのではないかと思います。

テレホンセックスというのは、日常会話とは違いますから、「テレホンセックスをするぞ」という前提を了解したうえで、テレホンセックスのための言葉を発していかなければなりません。

「テレホンセックスのための言葉を発する」という営みと比べてみると明らかですが、「出会い目的でテレクラを利用して女性を口説く」という遊び方で要求される言葉は、どちらかというと日常会話に気質が似ています。

もちろん、これは「どちらが良くて、どちらが悪いか」というような話ではありません。これはただ、テレホンセックスをプレイするにあたってまず抑えておかなければならない前提に過ぎません。

さて、この前提に立った上で、「テレホンセックスのための言葉」というのはどういうものなのかということを考えていかなければなりません。

なぜなら、それを考えない限り、テレホンセックスというものはいつまで経ってもプレイが開始されることがないからです。

「テレホンセックスのための言葉」をそれぞれに見出していくためには、「テレホンセックスとはなにか」を、テレホンセックスプレイヤーがひとりひとり考えていく必要があるでしょう。

「テレホンセックスとは何か」ということの基本となる部分を、おおまかに定義することは可能です。「電話回線を通して声と言葉のやりとりだけで遂行する性的交感」というのが、「テレホンセックスとは何か」の大枠に当たる基本です。

テレホンセックスという特殊な性行為は、テレホンセックスプレイヤーごとに快楽に至るための方法や道のり、あるいは「求めている快楽それ自体のヴィジョン」が違うとはいえ、その方法や道のりやヴィジョンなどは、前述したような「基本」をもとにして考案され、実践されています。

テレホンセックスというのは、その「基本」を見ればわかるように、「不自由であること」によって成立している性行為です。

どういうことかを改めて説明するまでもありませんが、たとえば、テレホンセックスにおいては「肉体」を使用することができません。

相手の身体に触れることはもちろんのこと、相手の顔を知ることさえできないという「不自由さ」のなかから、初めてテレホンセックスという時空間を創出することができるのです。

「テレホンセックスのための言葉」についてそれぞれに考えていくのであれば、この「テレホンセックスの基本＝テレホンセックスの不自由」という地点から出発するのがよいでしょう。

テレホンセックス独自の快楽というのは、その成立条件の不自由さによって支えられており、増加されるという特徴を持っているということができます。

テレホンセックスの快楽を深めていくためには「テレホンセックスがどのように不自由であるか」という境界線を探りながら、「テレホンセックスという不自由な制限のなかでできること」「テレホンセックスという不自由さのなかで使用可能な不自由な言葉」を見出し、それらの「可能領域」を組み合わせていくのがコツとなるでしょう。

テレホンセックスの快楽は、「ありふれた言葉の思いもよらぬ組み合わせ」によって発生し、加速し、持続するものです。

「テレホンセックスのための言葉」というのは、使われている単語だけを取り出すならば「日常会話」のそれとあまり変わらないものでありながら、それらを「テレホンセックスの不自由さ」のなかで組み合わせていくというリアルタイムでの作業を通して「日常会話」から決定的にズレていきながら「テレホンセックスのための言葉」になっていくというプロセスをはらんでいます。

このプロセスにおいては、当然ながら、テレホンセックスをするための相手となる女性とのやり取りも重要になっていきます。

「テレホンセックスのための言葉」は、「テレホンセックスという不自由さのなかで見いだされたありふれた言葉の思わぬ組み合わせ」を相手に投げかけ、その言葉を受けた相手が、また、同様に自分自身で見出した思わぬ組み合わせである「テレホンセックスのための言葉」を投げ返してきてくれたときに、「日常会話とは違うテレホンセックスのための言葉がぶつかりあう対話の磁場」になることによって、回線上の快楽運動を開始するものなのです。

この「テレホンセックスという対話の磁場」は、「テレホンセックスとは何か」という思考を出発点としてのみ生まれるものなのですが、この磁場は、また、この独自の対話を通して「テレホンセックスとは何か」ということに関する新しい思考を発生させる契機を持ってもいます。

「テレホンセックスのための言葉」は、「テレホンセックスとは何か」という思考の深まりや刷新、および相手となる女性の存在などによって、たえず更新されていくという性格を持っています。

テレホンセックスというプレイは、この「思いもよらぬ言葉の組み合わせ」による「テレホンセックスの言葉」との格闘、コントロール不可能な不自由さと向き合うことにその醍醐味があるといえるでしょう。